リンゴ まど・みちおリンゴを ひとつ ここに おくと
リンゴの この 大きさは
この リンゴだけで いっぱいだ
リンゴが ひとつ ここに ある
ほかには なんにも ないああ ここで あることと ないことが
まぶしいように ぴったりだ
リンゴの この 大きさは
この リンゴだけで いっぱいだ
リンゴが ひとつ ここに ある
ほかには なんにも ないああ ここで あることと ないことが
まぶしいように ぴったりだ
ぞうさん、ぞうさん、おはなが長いのねの詩を書かれたまどみちおさんの詩だ。今年104歳の天寿を全うし、その年齢に似合わない新鮮な目を持ったまま逝かれた。
彼の目から見ると何かが「そこにある」ためには、何もない空間がそこにあり、その何もないところにすっぽりと何かが入っているということだというのだ。しかもその何かは1ミリも自分の占領する空間からははみ出していない。あることと無いことがぴったりでないとリンゴはその場から弾き飛ばされてしまうとでも言いたいのだろう。
だとすると私たちの肉体も空間の一部を占領しながら、私たちの体に合わせた分だけ、空間をあけていただいているのではないか。
自然というものや神という存在が、そうやって私たちに居場所を与え、私たちを守ってくださっているのではないか・・・。
それは、もしかしたらとても幸せなことではないか・・・あなたや私の存在はそうやって肯定されているのではないか・・そしてそれはとても感謝なことなのではないか。
私は存在する。その場所に他に何物もあることができない。自分のためだけの空間・・・あなたも私も存在することを許されている・・・。
