河浜は、幼い時期を呉市音戸町で育ちました。両親は貧しくちっぽけな家庭でも、豊かな愛情に満ちた家庭で私たちを育ててくれたことに感謝しています。父は公務員でしたので、きちんきちんと給料はいただけるのですが、今と違い当時は公務員の方が一般の会社員より給料が安かった時代、母は洋裁の内職をして家計を支えました。
 その思い出の中での記憶・・・。我が家にテレビや冷蔵庫がやってきた日は嬉しくてその前から離れられなかったこと。私の部屋は屋根裏部屋でキャーキャー言いながら雨漏りの下にたらいや洗面器を置いたこと。トイレも台所も共同、共同台所で隣のおばちゃんがおいしい漬物を口に運んでくれたこと。「めざし」のことを煙と呼んでいたこと。野や山に、つくしやセリやツワブキ・わらび・よもぎなどを取りに行ったこと、こごみ・若いアザミや藤の花もてんぷらにしました・・・。
 そんな生活の中で、私はいろんな不思議とも出会いました。お風呂が無かったので銭湯に行く時どうしていつもお月様がついてくるんだろうと不思議に思ったこと。瀬戸の夕凪で風が止まる時間が少しずつ違うこと。林の中の葉っぱと葉っぱの隙間は四角や三角やいびつな形をしているのに木漏れ陽の地上に落ちた光の環は全部丸いこと。朝顔や夕顔がどうやって開く時間やしぼむ時間を知るのだろうかということ。コケに種類があるということ。海と空の境目の色が美しく変化すること。
 そして何よりもワクワクしたのは、岬の向こうを見たいという欲求、岬まで行かないと岬の向こうの次の岬までの景色が見えないけど、遠くの岬まで行っちゃうと未知の景色は見られても子供だった自分の脚では暗くなるまでに自分の家まで帰れないかもしれないという恐怖ともどかしさ・・・。
 私は、子供たちが集中して黙々と机に向かうような日々を過ごすことは大切だと思っています。同時に、子供たちの成長にはいろんな体験をすることも必要だと思っています。教育がバーチャルな世界に埋没してしまわないように、ほんの少しだけ抗っています。そして4月には小6の古墳見学です。